耳の冒険

あんまりうるさいので目が覚めた なんの音だろう 何かが破裂する音。枕元のカーテンを持ち上げると音はいっそう大きく途切れなく何度か鳴ったかと思うと止み、また何度か鳴り、それを不規則にくりかえしていた。花火大会でもあるのだろうか。こんな時期に。今日があまりに夏のような日だったから急遽日程をはやめたのかもしれない。毎年夏一番に花火大会をすることを生きがいにしているような人たちがいて、わたしの知らないところで夏を虎視眈々と狙っていたのかもしれない。最初は耳鳴りかとも思っていたけどいやにはっきりと鳴っている、それがわたしの頭の中の夏でないことがだんだんわかって来ると同時に、もしかしたら花火ではなく発砲事件かもしれないと思った 近頃何かと物騒だ。耳はよく聞こうと慌てて道路に面したトイレの換気窓まで走った。わたしはさっきまで眠っていて まだ体のほとんどの部分は眠ったままだったので、文字通り走った耳だけが換気窓に張り付いた あとからやってきてまだ夢を見ようとする脳をぐっと抑えて音を聞くと、もう音はいなかった。